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「NHK MUSIC SPECIAL ~藤井 風 いざ、世界へ~」をみた

もやもや通り越して怒りさえ沸いてきたので書く。
NHKって、テレビって、久しぶりに見たが、どうしてこんなに人をイライラさせるのが上手なのだろう。あっぱれ。

番組前半「死ぬのがいいわ」が世界で大ヒットって話題を伝えるために、外国人リスナーのインタビューが流される。

「いい曲です!」「すばらしいです!」

ね、すごいよね。

「こんな歌他に知りません!」「歌詞がいいです!」

はい。

サブリミナル的に藤井風本人のインタビュー
「日本ではこの歌はあまり聴かれてなくて」のあとにつかさず、YouTube「死ぬのがいいわ」再生回数の8割は外国!ででーん!とテロップ。

あの動画ってソフト化されたライブの切り抜きだよね?持ってるんじゃないの日本のファンは。だからわざわざYouTube再生する必要ないだけじゃないんですか?

気を抜いているとつかさず一生流れる外国人インタビュー。

「ぼくの彼女も日本人です!」「うちの民謡に似てまっせ!」
とうとう外国人がキッチンで歌を口ずさむの画。

い~や、もぉ、本人に歌わせろやハゲタコぉ!(©粗品

ほれ、外国人はこんなにみんなこの歌の良さがわかったのに、君たち日本人見逃したね?馬鹿だねぇ。気づかなかったのかい?と延々マウントを取られていたような気分。

あの歌を聴いたとき、こんな歌も唄うのかと驚いた。若いのにすごいなと。
けれど藤井風の歌あるあるなのだが、曲調も歌詞も何故か聴きなじみがあるような。
昭和歌謡?演歌?私たちが小さい頃聴いてきた大人の歌。そこになんだかシャレオツな洋楽風味が混ざって独特。まぁ素人だからこれくらいしか語彙が出てこないがとにかく、懐かしいのに新しい、だった。
歌詞だって「好きな人と一緒になれないのなら死んだ方がいい」なんて演歌にあったくない?「あなたを海に沈めたい」ってもう死ぬどころか殺すなんて歌もあるくらいなのよ。

私は洋楽を聴かない。でも、きっと、流行ってる歌なんて、あの人があの子に夢中で振り向いてくれないから他の男とイチャイチャしてやるわーとか、君がいなくて僕はどうにかなりそうだよー的な、所謂パーティーピーポー的な歌詞でしょ?(偏見)
そもそもビートルズの歌詞だって日本語訳びっくりするほどスッカスカじゃん。

日本の歌は元々歌詞重視でできてんのよ。
だから「死ぬのがいいわ」がいい歌詞でいい曲なのもあたりまえ体操なのよ。

なんでこんな番組の作り方するんだよ。
藤井風のスペシャル番組を見てイライラさせるなんて相当な手練れ。

つか、前回んときも気になったけど、ナレーションが「風」って呼び捨てなの何よ。アイドルかよ。「風さん」か、呼び捨てなら「藤井」か「藤井風」とかにしろよ。
なんすか、NHKは下の名前で呼ぶくらいズブズブな仲良しなんですよアピっすか?え?言いがかり?でしょうよ。もはや当たり屋よ。プンプンよ。

と、ふと、最近、日本のファンと海外のファンでいざこざがあったことを思い出した。詳しくは全く知らんのだが、なんかそんなことあったそうです。
あぁなるほどね。そこに乗っかってNHKさん煽ってきたのか。
おっと。まんまと、久しぶりにテレビジョンの罠にはまるところでした。

「死ぬのがいいわ」の「あなた」は恋愛相手ではなく、自分の中にいるもう一人の愛しく最強の自分、と藤井風は話していた。
ここ、すごく大事なとこではないか。
こういう風に他の曲のことも、もっと深く掘り下げたほうがよかったのではないか。

受信料使ってインドまで同行して、彼の精神の奥深くまで潜ることもなく、肝心なことにはさらっとしか触れず、それこそYouTubeでいつでも見られる「grace」のPVで尺を稼いで、安っぽいアイドルのウルルン滞在記みたいな作りに終始していた。

まぁ、だからこそ、ちょろっとしか出てこない彼のインタビューの言葉が更に重く響いたのだが。まさかNHKそれを狙ったのか。

彼の歌詞はどこまでも深く広く高く、そして儚い。
だからこそ若くして何故こんな歌詞を書けるのかということを伝えるために、もっと彼のバックグラウンドに焦点を当てた番組にした方がよっぽど見応えがあったのではないか。
それを伝えるためならサイババの名前を出したって全く構わないと思う。
むしろあのサイババの言葉をどう脳内変換させて、こんな思想を奇跡的に得たのかを知ることが、彼の謎めいた人間性を解き明かし、ひいてはその先にある唯一無二の音楽の深淵を少し覗くことができたのではないか。
25歳の彼がそれをどう考え伝えるのかを映像に残し、そして何年か何十年かした中年のくたびれた藤井風が何を思うのかを見てみたかった。

アイドルみたいなキラキラな装飾をつけずとも、大袈裟な冠をつけずとも、単なる音楽好きな兄ちゃんの歌が世界中に広がってゆく画のほうが夢があるじゃないか。
そしてどこにでもいるようなその兄ちゃんに話を聞いてみたら、一筋縄ではいかなくて、また彼の歌を聴きたくなってしまうのだ、誰もがきっと。

彼の歌を辿り、彼の精神を辿り、そうしていると更にもっと彼の歌を辿りたくなるという無間地獄に溺れてゆく。なんという天国だ。

それはさておき、当該番組は肝心な「歌」が一回もフルで流れないという。
続きは紅白で。
壮大な番宣。
草。