回らない寿司と大吟醸の地酒で身も心もお腹いっぱいでシャトルバスに乗る。
バッキバキのコルセットして杖ついて。
体はボロボロ、でも心はポカポカ。がんばれ老体。
ドナドナみたいに連れてこられたのはパナスタを何千倍も上回る辺境地。
本当にここでライブあるんですか?あったとしても誰のですか?
世界の配信サイトで軒並みランクインする人のライブ、本当にやるんですか。
雪も相まって、寒い、暗い、怖い。そして何より痛い。
やっと席について、どうか、ライブ中に腰よ抜けるなと祈りながら待っていると、始まった。
というか、やってきた。
自転車こぎながら呑気な顔で。
これから鳥肌立つくらいの歌を響かせる人とは思えない風貌で。
「優しさ」が吐きそうなくらい良かったけど、席が良すぎたので、公演自体の良し悪しはもう判別不能。
それでもライブ会場出た後は真っ暗だったはずの会場周辺が、はるか遠くにある街灯に照らされて眩しくさえ思えた。
この人のライブ終わりは、なぜかいつも少し寂しい。
あまりに刹那的で淡泊なのに、あまりに大きくて優しいからだろうか。
単にライブが終わった、というより、何か大切なものが終わってしまったような感覚で、もう一度は本当にあるのだろうか、もう二度となのではないのか、とさえ過るからだろうか。
今は藤井風以外に興味はない。
藤井風の声しか聴きたくないし、藤井風のことしか見たくないし、藤井風の話しかしたくない。
とりあえず丈夫な腰をサンタさんにお願いしよう。