fake_BOOTLEG

everywhere I'll go

藤井風

去年のお正月くらい。私が足の親指に包丁を落として腱切断して3ヵ月松葉杖ついてた頃。

YouTubeのおすすめにあがってきた動画。
昭和チックな色合いの中で男の人がピアノ弾きながら何かの歌をカバーしていた。
歌うめーじゃん、ピアノすげーじゃん。
で、その人の持ち歌PV見たらば、まぁイケメンがラブソングらしきもの唄ってますわ。
韓流系?はいはい、とブラウザーバックしたのですよ。

ろくに歌も聴かずに。

そして腱の拘縮が残り絶望的になっていた夏。つかまぁ夏は常に絶望なんですけど。
YouTubeのおすすめにまたあがってきた。
あぁ、この人ねぇ、はいはい、とまぁ聴いてみたのはオリジナルラブの「接吻」。なんだこの歌こんなにかっこよかったか?
ビリージョエルの「Honesty」。泣いてた。お馴染みの歌なのに、歌詞も知らんのに。なんだかポロポロ泣けてきた。

それからちゃんと歌を聴いた。
いい歌ばかりだ。いい歌という言葉が軽く聞こえる程、名曲ばかりだった。
特に「帰ろう」。
何なんって歌あるけど、こっちが言いたい。きみは何なん?
この歌詞、20代で書ける?何があったらこの境地に達せる?そりゃ私じゃあ80になっても書けないけども。
書けないけども、こういう思想を妄想でも理想でも思いつくには20代は早すぎやしませんか?
配信ライブも見た。
もう鍵盤が体の一部になっていた。
たまに声がもやは楽器みたいな歌手はいるが、彼は体全体がピアノと同化していた。
指の先から鍵盤が生えているという方が正しい。

気が付いたらね、もうAmazonでアルバムとブルーレイポチポチしてたわ。

久しぶりの捨て曲なしのアルバム。
何がすごいってこの私が、英語の歌を聴いて楽しいとか切ないとか言いながら聴き続けているところよ。
ビートルズカーペンターズとあとなんかCD持ってたけど、5回くらい聴いてどっかいったもんね。

何があるのかわからない。
けれど、彼の声は、彼の声で唄ってもらえば、全ての歌が生き返る。
死んでるみたいな言い方は大変失礼だが、私にとってはそうでもなかった歌たちが、彼の声にかかると、初めて聴く名曲になる。

惜しむべきところは、強いて言えば、見た目がいいところ。
背も高いし、イケメンですし、唄う表情もモテ人生を歩んできた男系。
だからそれで敬遠してしまう人もいるのではないでしょうか、初見の私のように。
まぁ寝ころび配信ライプとか見るとね、全くそういう次元で勝負してる人ではないことはわかるのだけれど。

なんていうのもよ。本日の紅白で、その心配、どこ吹く風よ。
紅白の目玉で、普通ならば、別スタジオでさっと唄って一言も発さず、お先に失礼します、でもいいくらいでしょう。
NHKからしたらもう出てくれるだけでいいっす、でしょうし、私もそんな感じなんだろうと思っていました。
で、蓋を開けたら。
ちゃんと会場に来て、司会者とからんで、まさに風のように去っていったかと思いきや、ラストで軽やかにピアノとコーラス披露。
蛍の光までもさゆりと楽しそうに唄って。

まんまと、女性ファンくそほどゲットよ。「かっこいいし、かわいいし、ピアノ弾けるし、歌も上手いし、曲もいいよね!」よ。
おねーさんたち褒める順番が逆だけども、良き良き。とりまビジュアルから入ってもろて、それからちゃんと聴いておくれ歌を。
「帰ろう」「青春病」「旅路」「優しさ」歌詞にも耳を傾けてじっくり聴いておくれよ。
そしたらもう抜け出せないから。

フィクサー誰なのよ。彼の売り出し担当は。有能過ぎる。今の時代にあった売り出し方だわ。
敷居は低くするけれども、安売りはしない。この塩梅。素晴らしい。

然るべきかたちで売れ続けて、少しでも息の長いミュージシャンでいてほしい。

久しぶりに「好きな音楽があること」の喜びを噛みしめている。
どんな新曲なんだろう、アルバムは?ライブは?と待ち遠しくなる。こんなのは10年ぶりくらいか。

YouTubeのコメント「歌も上手い、ピアノも弾ける、英語も話せる、背も高い、イケメン。せめてワキガであれ!」みたいなの笑った。
神様はたまに不公平過ぎるほどの二物を与えるよね。
その気まぐれが私が生きている時に起こってよかった。

God bless us