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NHKでやってた忌野清志郎の番組

忌野清志郎、あんまり知らないのだ。すみません。だってちょっと世代が前だもので。

それでも、死んじゃった時は寂しいと思った。
TVBrosの特集版買ってしまったもの。

だもんでわざわざこの番組を心待ちにして見たというわけではなくたまたま見た。

TBS「音楽の日」たまぁにチャンネル合わせると80%の確立で48系列の人たちなんで、ただつけておく、ということにも耐えられず、どうしようかなぁと番組表見てたら、清志郎の番組がずっとやるっつんで、見てみた、というわけです。

ドラマ「トランジスタラジオ」。
役者が好いなぁと思ったし、本人の生い立ちをそのままドラマにするんじゃなく、もう一人の、という設定にしたのが、「清志郎ってそんなに簡単にドラマにできるような人じゃないんだよ」っというのが伝わってきて、彼の存在が大事な聖域であるかのように描かれていた。好かった。それにリリーフランキーは本当に寂しそうだった。

それに対して、次にやってた「名盤ドキュメントRCサクセションシングル・マン”」。
ダサかった。ダサいという言葉もダサいが、それしか浮かばない。
清志郎に関わった人、ファンだという業界人たちが、このアルバムを1曲1曲解説するという。
時には、ボーカルのみの音、ベースのみの音、と歌を解体して聴いて解説するという。
はたまた、知らない小汚いおっさんミュージシャン(いや名前くらいは知ってるけどさ)が清志郎っぽく何曲か唄っちゃうという。

なんという、野暮な番組。流行でいうところの、これぞまさにゲスの極みだった。

歌を解説って、しかも、何も関わってないやつが。本人が歌の解説するのだって相当かっこ悪いってのに。
歌をバラバラにして、褒めてたけど、たとえば美味しいハヤシライスがあって、それを、ルーと具とお米、別々に食べて、いやぁ美味いねぇ、ってやってるみたいだったよ。
こっちからしたら、あんたら本当に味わってるのかね、とりあえず美味しいっていってるだけじゃねーの?と。
挙句の果ては、知らねーおっさん(いや知ってるよ有名だよ)が清志郎のものまねで熱唱して番組のエンディングって。「お前が唄うんかい」ってモヤモヤモヤモヤ。

唯一、散々ぱら話してた陽水が「(アルバムシングルマンを)今度聴いてみるわ」って最後に言ったのは面白かった。聴いたことないんかい、と。だけど、一番、まともだった。「他人の作った曲のことなんてわかるわけないじゃない」という感じがありありとしてて、よかった。

で、改めて、心底、思いました。
忌野清志郎なんて、バケモノです。天才です。天井人です。
10代の頃から、たぶん、生まれたときから、この人は、こういう人になるべくしてなった人で、「清志郎みたいになりたい」とか「清志郎に憧れてロックやってます」とか、言ってる人がいたら気が知れないし、もしこれから言おうとしている人がいるならどうか思い直して欲しいし、もう言っちゃったんなら自分の身の程知らずさに毎晩苛まれて不眠症になって欲しい。
そうだ桜井、おい桜井よ。「スローバラード」よくカバーできたなぁ。その勇気だけは買ってあげよう。本人も今度のアルバム曲「You make me happy」で自虐ってたけどね。わかるよ、そうでもしないと、示しがつかなかったのだろうよね。

忌野清志郎は「一握りの人」だ。
握りというか、「一つまみ」だ。
歌詞も歌唱もメロディも、ついでに絵まで、今日チラっと聴いたり見たりしただけでも、その稀有な才能にお腹がいっぱいになってしまった。

番組終わって、次はシェリルクロウだった。かっこいいわねぇ相変わらずと、清志郎のあとはシェリルクロウなんてNHK、がんばってるじゃんと、気をよくして、TBSにちらっと変えたら、ザイル系だった。
甘いマスクのチンピラみたいな人たちが踊ってた。
さっきまで、天才ミュージシャンで満たされた音楽脳は瞬時にフリーズして、チャンネルを変えるという指令を指先に伝えられず、何故かそのまま画面に釘付け状態。
その次は若手のバンドたちがワラワラワラ唄ってた。社会の不満っぽいことや、愛は大切っぽいことや、あってるのかどうかもわからない英語の歌詞をそれらしく唄ってる人もいた。
自分の口が開けっぱになってたのに気づいて、我に返り、とりあえず、シェリルクロウに戻しておいた。

彼が今生きていたら、この人たちと同じ音楽の世界で唄っていたら、
どんな歌を唄っていたんだろう。

59歳で亡くなるのはやっぱり早かったねと、自分が中年になってしみじみ思う。
たまに「死んだから伝説になったんじゃね?」ってバチ当たり覚悟で言いたくなる故人がいる。
でも、清志郎は違う。
この人はあのままずっとずっと長く生きていても、生きたまま伝説のミュージシャンとなっていたんじゃないだろうか。

かわいらしくて、やんちゃで、不満たらたらで、どこか寂しそうで、どこかふざけてる。
思慮深いと思ったら、のらりくらりとかわされ、肩透かしをくらう。
ニコニコしてるから近づいたら、毒々しい言葉で追い返されて。
原色を纏ったじじぃミュージシャン。
愛すべきミュージシャンだったんじゃないかと。

あんまり知らないけど、知らなかったから、もっと生きてて、もっと歌ってて欲しかった。