遠くからレンホウの声がした。
「はい、だめなんです、Mr.Childrenに、桜井和寿に限っては」
今日のMステの名場面はヒロトの常軌を逸した熱唱でも、タモさんの進行した薄毛でもない。
「シングルCDランキング」だ。
ジャニーズのペーペー過ぎて、この時間で既に名前も忘れてしまったグループが1位で、2年ぶりの地上派!とか持ち上げられて、大御所扱いのMr.Childrenが2位だったってことだ。
ジャニーズのペーペーがどういう売り方をしようが、AKB商法だろうが、Mr.Childrenは、桜井和寿の作る歌は、1位じゃなきゃ、1位を取れる歌を唄わなきゃ、だめなんです。
驚いた。
「は・・・」と、微かで、超音波みたいな、犬にしか聴こえないような声がでてしまった。
けれど、怒りとか不満とかそこには含まれてはおらず、ただ純粋に、「は・・・」だった。
微妙な表情の桜井和寿。
顔が浮腫んでいたのは、ヒアルロン注射でもボトックスでもなく、自棄酒のせいか、とホッとした。
いやしねーよ。
これが答えなんじゃないでしょうか、桜井和寿。
その後、2曲歌ってるのちゃんと聴きましたよ。
昔みたいに、正座こそしてませんが、いや昔もしてないけど、ちゃんとちゃんと聴きましたよ。
Melodyは、まぁ、いいんじゃないでしょうか。若々しくて。それこそいきものさんみたいで。
よかったじゃん、いきものさんみたいな歌作れて。ね。
あれだね、でも、じゃあいきものさんでいいよね、その歌唄うの。
足音ね。はい聴きましたよ。あれですよね、「終りなき旅」っぽいのやりたかったのかな。
ね、なってたよ、っぽいよ。でも、っぽい歌、でいいのかな。
やっぱ歌詞があれだと、あなたの唄い方は大袈裟だよ。みなさんの言うとおり。
そんなに汗かいてまで唄う歌詞かね。と思ってしまうよね、今の歌詞なら。
いきものさんみたいにニコニコして歌ったらいいんじゃない。
もう歌詞かけないんなら、唄い方を歌詞に合わせてみたらいいかもね!
いきものがかりに敵意はございません。あの子たちはあれで大変良いバンドだとおもいます。
じゃなくて、桜井には桜井にしか唄えない歌、Mr.Childrenでしか聴けない歌があったじゃない?
あれを待っているんであって、だ。
~さんみたいの、とか、昔のMr.Childrenのあの曲みたいなの、とかを待ってるんじゃないの。
聴いたらさ、あぁ・・・って。
このどうしようもない生活を今日まで続けてきた意味とか、何に対して鬱々しているのかとか、どの風景が幸せだったのか、どの時に笑えて、どの時に泣けてしまうのか、誰に会いたいのか、好きなのか、
そういうことが、歌を聴いただけで一度に押し寄せるような、そういう歌をね、そういう。
もういいや。
やっぱり、これが答えだ、桜井和寿。
ご覚悟を。