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「タイタニック 3D」を観た

2Dが辺鄙なところでしかやってなくて、仕方ないと3Dでしぶしぶ。

きっとこの先3D映画なんかを観ることはないから、これが最初で最後になるだろう。
けれど、それがこの作品ならば、映画生活だけは贅沢だったと遺書に書こう。

もう何回だかわからないが、たぶん8、9回目か。映画館で観るのは。
これまでもこっそりリバイバルやってて、その度必ず2回は観ていた。
どうしても観てしまう。

そしてこの3D。
3Dって、どうなのそれ、意味ある?ってケンカ上等態勢だったけど、まぁ、やっぱり意味はない。
ただ、映像が格段に綺麗だった。それだけで十分。

3Dだろうが4Dだろうが、この作品は揺るがぬ名作だ。
誰がなんと言おうと、堂々と、一番好きな映画は「タイタニック」だと、言う。言うぞ。

時計仕掛けのオレンジだってモンスターだって砂と霧の家だって悪趣味なファニーゲームだって好きだ。
けれど、「タイタニック」は別腹の別格だ。
それでも好きな映画は?と訊かれると、このタイトルを口にするのを躊躇してしまったものだ。
タイタニックミスチルが好きとか、だって、気持ち悪いやん。ダサいやん。
あぁ、けれど、もう言うよ、これからは胸を張って、「タイタニックが大好きですけど何か。」

毎回泣いてしまう。
とうとう、今回はこれまでとはまったく違う、きっと、流れてはいけないほうの涙が止まらなかった。

ジャックとローズの、瑞々しさ、艶やかさ、蒼さ、直向さ、可愛らしいとさえ写る一途さ。
それはもう、キラッキラしてて、それだけで、泣けてしまった。

二人が幸せの絶頂でも、悲劇の只中にいようとも、笑顔でも、傷つけあう姿も、ただ泣いて抱き合うことしかできない場面であろうと、二人のその眩しさったらない。
だから、終始涙が止まらなかった。

これまではどんな感涙だったかと思い返す。
100歳になるまでジャックへの思いを途切れさせることなく生き続けたローズ。
ただ目の前にいる愛する人の未来を信じながら死ななければならなかったジャック。
そう思いを馳せただけで泣けてしまった。

でも今回は全く違ってしまった。
若さがとても夢のように遠いものになってしまったことを、まざまざと見せ付けられたようだった。
私にもあったかもしれない純粋さ一途さ、いや、きっとあったんだろうけど、もうそれさえも思い出せないほど、遠いところへ、追いやられてしまった現実を、今を、思い知らされた。
静かに、厳粛に、もう帰れないんだと。

15年。
そんな前だったか?と心底驚いたけれど、ちゃんと15年、経っていた。
そして、15年目の答えあわせ。
今のこれが、ここが、あなたの答えなんですと。

無論、この映画を観ているときは、つらい自分の現状など浮かばない。
映像のそれよりずっと、圧倒的に美しいラブストーリーの顛末に胸がつまる。

見終え、幸せな思いに包まれるのはセリーヌディオンの声が聴こえるまで。
エンドロールが終わった瞬間、映画館が明るくなった瞬間、
空虚な想いが何故か残るのなら、それはずいぶん遠くまできたという証。
引き返すことはできないのだと、自分のために泣きましょう。

ラブストーリーの映画は、「タイタニック」以外、いらない。