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everywhere I'll go

「銭ゲバ」を見た

「貧乏人って悔しい」

そう言って、病弱な母は病院にも行けず、死んでいった。
優しい息子は金のせいで母が死んだと叫ぶ。

成長した彼は、金に憎悪を抱きながら、金の亡者となっていた。

思いもよらず、久しぶりに面白いドラマをみつけてしまった。
役者もいい。主人公風太郎に松山ケンイチ
何を考え、何に笑い、泣くのか。全ての感情が能面のようになった男の佇まいは、あまりメディアに露出しない彼にはぴったりだ。
松ケン主演ドラマにハズレ無しとみた。
また少年時代を演じる子役がお見事。子っつか、立派な役者だ。
母親想いのけなげな子供が、菓子を盗み、金を盗み、ついには人を殺してしまう。
悲しみと憎しみを膨らませながら、貧乏人の奈落へと、転げるように堕ちていく様を丁寧に演じている。

脚本が岡田惠和だった。またもや岡田惠和。いいドラマだと思うと8割この人だ。
したら原作は漫画。しかも、1970年にすでに連載されてたっていうんだから。
派遣切りなんてのを織り交ぜて、時代背景を合わせているが、合わせなくても合ってしまったというところか。
「金」を巡る世界は何も変わっていないから。
何十年経っても、人は金で心を豊かにし、金で心を狂わせてゆく。

風太郎に、派遣切りにあった同僚が金を貸してくれと土下座するシーン。
「今、金がないと、死ぬしかないんだよ」
風太郎はぼそりと言う。
「じゃあ、死んだらいい。貧乏人は幸せになんかなれない。死んだほうが楽になる」

誠実なドラマを見て、とてもいい気分でネットを立ち上げたら、一青窈が財布の金を何万円だか盗まれて、その犯人にブログで訴えたんだそうだ。
「どうか私のお金を世の中のために使ってください、募金してください」と。
吐き気がした。「私のお金」って、何様だ。
他人の旦那に手をだしておいて、お前がまずドロボーだ。

目の前に金さえあれば、どんなに幸せだろうと妄想する。
世の中に金さえなければ、どんなに穏やかでいられただろうと想像する、
ズラ。