fake_BOOTLEG

everywhere I'll go

全力でその日暮らし

 いつかはあんたも俺らも灰になっちゃうんだよ

書くことねぇし、テレビ見るもんねぇし、ってとりあえずぼんやりNHKみてた。

沖縄から上京してずっと派遣で働いていたの33歳の男性が、今回の派遣切りの対象となり、10年の派遣人生を断ち切り、故郷へ帰り、全国で就職率最低の地元で就職活動を始めたという話だった。

彼は今回のことでいろんなことに気づいたと話していた。
仕事と会社の往復だけで、孤独を感じ、自分は人間関係の中で仕事をしたい、とか、目の前のことに捕らわれ過ぎていたとか、反省していた。
与えられる仕事をこなしていくだけではなく、どんな仕事をしたいのかを考えなくてはいけない、ずいぶん長い遠回りをしてしまったとも言っていた。

私の、この毎日の繰り返しは、寄り道だというのか。
何がいけないのだろう。
淡々と積み上げられた仕事を右から左へ片付け、その日その日を暮らして、誰にも褒められることもなく、誰とも話さず、笑いもせず、でもそれが仕事だと割り切ることの、何がいけないのだろう。
もちろん番組では、ひとことも、ハケンのままじゃいけない、とは言っていない。
けれど、彼が全否定していたことは、今の私の日常だ。
この毎日が、いっぱいいっぱい精一杯だよ、となんとかやってる私には、そのままのあなたじゃ破滅すると言われてるようだった。
しかも彼が10年派遣をしていた工場は秋葉原殺傷事件の犯人も働いていたところだったとナレーションが入った。
そのままのあなたじゃ、人殺しになりかねない、とも聞こえた。

別に、沖縄の彼のことを、悪くも思わない。
ただ、彼をピックアップして、こうやって放送されると、派遣でやってくことってそろそろ限界なんだよ、みんな、もっと、顔を上げて前を向いて行きなさいと、言われてるようだ。

確かにうつむいて歩いてはいるが、派遣だからではない。
やりたいことも、できることもない、根性もない、けれど金が必要。
そういうだめな人間にとって、私にとって、最後の砦だったのだ、ハケンというのは。

今騒がれてるような、そんな大層なもんじゃない、ハケンなんて、そもそも。
なのに何を勘違いしてか、向上心やらやりがいやらを掲げるハケンが増えた。
増えたのか?増えたようにメディアが伝えてるだけじゃないか?
私のような姿勢のハケンが大多数のはずだ。
ただ、そんなのテレビで放送しても、しょうもないからだ。

そう、しょうもないのだ、私など、ハケンになってるやつらなど。
破滅も限界も、来るのは早い。そんなの知ってる。
でもただ早いだけ。

どんな踏ん張ったところで、遅かれ早かれ50年もすれば、あたしも、あたしの周りにいる人間ほとんどみんな、どうせ、消えてなくなる。