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everywhere I'll go

Pink

ある田舎町。

その町には弱い人を助けたり、学校の先生みたいなこともやって、とにかくみんなに信頼されている男がいました。少し白髪の目立つその人は桜井さんと呼ばれていました。

とにかくみんなの人気者で、先生のときは、女子高生たちが授業中「かっこいい」とうるさくて授業にならないくらいでしたが、そんなことより、桜井先生は、とにかく大切なことを教えようと必死でした。地球をよくしようという授業でした。

その町には薄汚い男の子がいました。みんなの嫌われ者で、憎まれっ子で、本当に皮肉ばっかり言ってる子でした。いつも遠くから、桜井さんのことを、ケッと唾を吐きながら見ていました。

ある日、男の子は、普通の人間なら寄り付かない廃墟のような場所で寝起きしていました。いつものように汚れた布団に、今日もへとへとだと言いながら寝転がろうとした、その時、布団の中に、獣がいました。こちらを睨んでいます。それでも私は逃げようとせず、ただ、ああもう死ぬんだと冷静でした。

男の子が、私になっていました。それとも、私が、男の子になったのか。
ともかく、いつの間にか私が獣と対峙していました。

獣が気持ちの悪い白い塊のようなものを吐き出しました。
その塊が私の首から、体の中に入って、心臓に達したのがわかりました。
これまでに経験したどれよりも、気味の悪い感覚でした。
体が思うように動かなくなり、他人のもののようになり、すぐに私は全てを諦めました。
自分は終わったのだと。

同時に、無性に、最期にせめて桜井さんに会わなければと、残り僅かな力を振り絞って、桜井さんのいる場所へと向かいました。

桜井さんはレストランで食事をしていました。
その姿を見つけて、私は泣いてしまいました。
近づくと、桜井さんはびっくりして、言いました。
「どこへいってたの?みんな心配してたんだよ」
私はここに座っていいですかと、やっとの思いで言いました。
声が出なくなっていました。
「もちろん」と桜井さんは笑って言いました。
私は泣くのを我慢して元気ですかと訊きました。
「うん元気だよ。君はどうしたの何があったの?」
私はそれには答えず、搾り出すような声で、みんなに何を教えているんですか?と訊くと
「地球がどうしたらよくなるかを教えているんだよ」とメモを見せてくれました。
私は何かを言おうとするのですが、もう声が出ません。
「ねぇ、そんなに小さな声で話さなくていいんだよ。誰も君の事を悪く思ってないんだから」
私はおいおい泣きました。
「外で話そう。食事は持ち帰るから平気だよ」と桜井さんは言いました。
お店を出る時、ガラスドアに自分の姿が映っていないことを知り、私は絶望的になりました。
どんどん息が苦しくなりました。
桜井さんが携帯電話を差し出して言いました。
「何か困ったことがあったらこれを使っていいからね」
私は首を横に振り、ただ泣きました。
「きっと何か原因があるんだから、ちゃんと調べよう。まだ間にあうから大丈夫だよ」

目が覚める。
携帯のアラームが鳴る10分前の時間。
目の周りに涙がいっぱいあった。

さすが歌になるくらいだ。
夢って何より奇妙だ。