fake_BOOTLEG

everywhere I'll go

確認しました

10月から赤坂とかまた身の丈とそぐわなすぎる場所で働いている。
言ったっけ。

そのハケンのポジションは前任者が初めてで、1年かけてそいつはいいだけ仕事を増やしに増やし、「やっぱりあたしって事務向かないわ、出版業界に戻るわ」とか言い残して、あたしにごっそり、しかも、雑に引き継いだ。

あたしと同い年でびっくり。
シワだらけで格好ばかりが大人気ない。
おしゃれと勘違いしているみたいだが、ただの幼稚にしかみえぬ。
そう、もう、ヒサモトにしか見えない女だった。

気だけが強くて間違っても絶対謝らない。
いるぅ、どこにでも、いるぅ。
仕事が早いと自分で言っちゃう。
超遠回りでアナログなやり方して、それをせっせこ1日かけて終え、その言い草。
はっ。

いなくなってよかった。

なんの話だっけ。

あたしはもう一人の全く違う仕事のハケンの仕事も引き継いだ。
二人分をひとりでやれと。
訊いてない。まったく訊いてない。

そのもう一人の麻布十番に住むアラフィフ女が言ったのだった。
「みんなとてもいい人だし、頼りになるし、仕事のできる人だから働き易いと思うよ」と。
確かに、歓送迎会もやったというのに、さらに彼女の最終日、ランチの時間にみんなでサプライズやっていた。
会社の金でもちろん。そんなところみたことない。
とにかく、表向きだけでも、善人っぽさ最大値かと思われる職場。

どうでもいい。

仕事が簡単だろうと、難しかろうと、大量であろうと、暇暇であろうと、社員に恵まれようと、下僕のように扱われようと。

私は労働が嫌いなのだ。
毎日毎日同じ時間に起きて、顔を洗って、会社に行くのが苦痛で仕方ない。
やっと帰ったと思ったら、今度は明日のために風呂やら洗髪やら。
面倒くさくてもう仕方ないのだ。

会社は大手でほとんどの飲み食いは会社の金で落ちる。
部長と部下は今日ずっと楽天のセールでルンバが安いが買うまいか否かを議論していた。
おっさんたちは家に帰ると専業主婦の妻が残した食器洗いを喜んでやるのだそう。

ノンストレスな労働でいい給料をもらっているから心に大変ゆとりがある。
家族も円満で幸せそうだ。
なぜいい給料をもらっているかというと大手に勤めたからで
大手に勤められたのはいい大学を出たからで
いい大学に入れたのは学費に惜しみない金をかけられたからで
それは親がそもそも金持ちだからだ。

こうやって金持ちスパイラルは普通にしてれば耐えない、どころか、そういう人たち同士はそういう人たち同士で家族を作り、むしろ、倍倍ゲームのように潤う。
間逆の世界で貧乏スパイラルも着々とゲームが進んでいく。

のだなあ、と、身の丈にそぐわない場所で、身分の違う人々と、パスタをすすっていた1分くらいの間に、ぼけらーと感心していた。

社会に出るのは、イヤイヤイヤなのに出なくてはいけないのは、お金のため9割、
残りの1割は、自分という人間が社会のどのへんにいるのかを再確認するため。

そんなのもう重々承知している、20年くらい前から。
けれど、望もうと望まざろうと、確認作業は永遠に、ふいに、続けられる。