久しぶりに映画を観た。
インド一色の映像、愛らしいアイテムたち、幸せな音楽、
香辛料の香りまでが映画館に充満してるんじゃないかと鼻を疑ったくらい。
ストーリーは、もうちょっとじわっと泣けたりするのかなと期待してたんだけど。
まぁ、あたし、大概、泣きたがりぃなんでね。
すっとぼけた3兄弟のドイツ旅行のお話。
3姉妹のあたしから見たら、これがもう、よく描いてくれてて、大満足。
次男はその胸の内に、常に2番手であるという煮え切らないものを抱え、兄に敵対心を密かに燃やす。
三男はそんな上2人の架け橋というかダシに使われながらも、振り回されることなく、実は一番冷静で、わが道に、夢に貫き進む。
そして、長男。
長女の目には、なにより、この長男が痛々しく映ってしまった。
身も心もまさにボロボロの包帯だらけで、癒しだ心の旅だと形にばかりにこだわり、完璧主義で綿密な計画を立てる。思い通りにならないと全てを放り出す。
かと思えば、その場の思いつきで突飛な行動に走る。そしてまた怪我をする。
バラバラな3兄弟は共通の傷を持つ。それは父と母の存在。
壊れた家族。
きっと、泣かせようと思えば、暗く重たい涙をすぐ流せるはずのテーマ。
なのに、喪失感や絶望感の代わりに、
眩しいほどの色彩、鼻歌のような気負わない音楽、弱くて優しい飄々とした3人の男を乗せて、
疾走と急停止とスローモーションとワープを繰り返し、ただただ列車は走る。
すべての呪縛から解き放たれたラストの3人は、
急行列車が通過するときに吹く風のように、自由だった。
映画はやっぱり観るべきだ。