fake_BOOTLEG

everywhere I'll go

Starting Over

「何かが生まれ また何かが死んでいくんだ」
そうきっと そこからは逃げられはしないだろう

聴けば聴くほど好い歌でどうしてこれをボツって「足音」なんぞをシングルカットしたのか気が知れない。
このアルバムを聴いて一番愕然としているのは、誰あろうお台場フジテレビさんではなかろうか。
「えー、ハッピーソングってなんだったのー、足音ってなんだったのー、えー、もしや俺たちバカにされてた?」
他にあんじゃん、と。書けるんじゃん桜井さん!と。

この歌。実のところこの歌詞のこの部分がいいんだよねぇっていうのはない。
さすがにサビだけあって
「僕だけが行ける世界で銃声が轟く」っていうのは、耳を傾けるフレーズではあるけども。
けれどその殆どがありふれた言葉、聞き慣れた言い回しでもってできている。
「何かが終わり また何かが始まるんだ」なんていうのは、そうさなぁ、ヘタすりゃセカオワさん辺りも乱用しかねぬ。
けれど、なのに、曲全体に広がるこの「名曲感」ったらない。
それは「Any」のような透明感、もっと言えば「終わりなき旅」のような壮大感、が混ぜこぜになって、わたしが個人的に大好きな、歯を食いしばり、向かい風の中をゆくような、孤独と強さが入り混じった歌となっている。
あぁ名曲。やっと、久しぶりの名曲。

これでしょう、これ。桜井和寿にしか描けない歌でしょう。
つべこべ言わずにこういう歌を作ってりゃあいいんだよ、桜井。
あ、えーと、作り続けていただけませんか、桜井さん。

ですから「バケモノの子」の宣伝番組で、もうちょっとフューチャーしてくれてもバチは当たらないと思うのよ。
こんな好い歌、なかなかよ。それをしかも主題歌よ。下手すりゃそれを聴くためにちょっと映画館行っちゃおうかなって、うっかりやらかしちゃうほどだったのよ。
ねぇ、お台場の皆さんならわかってくれるわよね。

この歌に宣伝文句をつけるなら、本ならポップをつけるなら、「祝・桜井和寿完全復活」。
まるで演歌みたいだけど、それくらい、祝いたい。嬉しい。

「REFLECTION」はこの歌のあと「未完」と続き、終盤で怒涛の復活劇を印象づけて終わります。
「完全燃焼!」という声さえ聞こえてきそうです。

ん?
いや完全に燃え尽きちゃったらいかんのです。
「Starting Over」なんでしょ?火、点け直したんでしょ?
どうか新しい火種、大事に大事に絶やさず、次の灯りを点し続ける、尽きることの無い「はじまり」としてください。

怖いのは、恐ろしいのは。
もしかしたらアルバム収録曲の殆どが、むかしむかしの大昔に作られたストックで、「足音」こそが、だけが、本当に本当の最新曲だったというオチ。
そのオチの答えは次回作。

最悪のオチが脳みそを過ぎるたび、できればこのアルバムを最後に、桜井和寿このまま隠居してくれないか、と手を合わせてしまう。

いや、たとえ最悪のほうのオチだったとしても、「REFLECTION」というアルバムを聴けた。わが人生に悔いなし。
だからおばあちゃん、おとうさん、早くわたしにお迎えを遣してくれないか、と手を合わせよう。