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everywhere I'll go

「B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS-」を観た

 ぜったい会いましょう いつかどこかで

行ってもいないLIVEのDVDを見て、こんだけ大笑いして、泣くとは。
しかもそれがミスチルのではなく、B'zのでとは。

お二人は今、音沙汰ないようだが、そらそうだ。
休ませてやってくれ。中年のおっさんには相当な消耗であったろう。
彼らのLIVEの最後は「せーの、おつかれ!」と言って〆るのが通例だそうだが、いやもう、ほんとお疲れちゃんだよお前がな、と突っ込みたくなるほどの一部始終が、収められている。

ともかく、ファンでなくとも行きたかった。
私のような、曲を聴けばなんとなく口ずさめる程度とか、妹がファンでなんだかんだで呪文のように聴かされてるとか、そんくらいの人間なら、十分に楽しめただろう。

20周年ということで、殆ど、シングルで耳なじみのある曲ばかり。
途中の小休止には懐かしい“あの頃”のVTRが垂れ流される。
これが、ひどい。
“あの頃”ってのは、妹でさえ大嫌いだった頃。
今B'zが嫌いな人たちはあの残像がちらつくからなんだろうな、の頃。
ステップに夢中で、薄化粧に夢中で、肩パットに夢中の、カメラ目線のB'zの頃。
テレビ初登場の映像は、特に、ひどい。
何万という、もう絨毯のように敷き詰められたファンの前で、恥がさらけ出される。
絨毯は波打ち、もう、遠慮なく、大爆笑だ。
怒涛の笑いの渦の後、二人が登場し座りトークが始まる。
まったりと思い出話をして、二人が始めてセッションしたという「Oh! Darling」をやった後に、「いつかまたここで」をやる、二人だけで。
なんとなく稲葉さんの瞳が薄っすら光って見えて、さっきの大笑い映像も、全てがこれのフリだったのかと、まんまとこっちもグっとくる。
このB'zぼっちの時間は「LIVE-GYMはまだまだ続きます!」の言葉で終わり、1枚目のディスクも終わる。
眠くても、2枚目に手が伸びる。

そういえば、あまりに、またかよの風景で言い忘れたが、雨がザァザァ降りだった。
だもんでこのDVDのジャケットは雨粒がデザインされている。
妹に見せてもらう彼らのLIVE DVDは雨が多い。
この20年切っても切れないものの一つが、やっぱりちょうどこの20年目の良き日もそれであったというのも、どこか神懸かっている。

9月の雨に濡れるおっさんたちは、そういうわけで、後半は満身創痍の様相。
何かに憑かれたようなステージアクトに目が釘付け。
あげく大サービスに短パンが復活。
見逃せない。その足の細さに加齢は隠せない。

特に2人の絡みはなんだか新鮮で、松本さんの横で堂々とやれるまでに成長しました稲葉くん、というのが、垣間見えて、またググっときたりしてしまう。こういうところは、NHKのB'z特番もセットで見れば、尚のこと感慨深い。

彼らの歌は常にLIVEを想定して作られているのもよくわかる。
目の当たりで聞いているファンは心から楽しいだろう泣けるだろうという歌ばかりだ。
途中、松本さんがソロでギターをチャラランというテイで弾くのだが、不思議なことに、作詞家でなくても、なんだか言葉が出てきそうになる。
彼の奏でる旋律は言葉が乗せ易くなってるんじゃないかと知り、再び、この男の音楽モンスターっぷりを確信してしまう。

ロマンチストでかわいらしい詞が野太いロックに乗っかったり、優しいメロディに破綻がちらつく歌詞が乗っかったり、と、私が当初よりB'zに好感が持てるようになったのは、まず、歌をちゃんと聴いたからだ。
だから、是非、食わず嫌いなどせず、歌をまず聴いて欲しいのだと切に訴えたい。

DVDの話に戻るが、ともかくスタジアムでやってるのに、LIVEハウスに思えるほど、その空間にいた人たちが同じ音楽でもって、一体化し、狂喜乱舞していた。

耐え切れなくなったので、比べるが、ミスチルのLIVEは正直、他人にオススメできない。LIVE行くなら、そのお金で是非DVDを買ってくださいと、悪いことは言わないからと、低調にご案内することにしている。
シャンシャシャンの民謡風手拍子。左右へ手を振るいわゆるスイーツ(笑)なフリ。
今回のツアーじゃ、どうせ「HANABI」の“もう一回 もう一回”のところで、みんな人差し指立てて「もぉーいっかい!」てやるんでしょ?大塚愛かっちゅうの。

B'zもフリみたいなのをやってたんだが、それは稲葉さんが考えたもので、なんちゅうか、楽しむための一つの小道具になっていて、むしろやりたい。「恋心(KOI-GOKORO)」、すっげやりたい。

LIVE佳境。
ラスト前の2曲目「孤独のRunaway」は、20周年なんてただの通過点なんだと、言い切るというより、言い聞かせてるように見えて、かっこいいを通り越し、凄まじい。

全ての最後、二人はステージから降り、アリーナ席の周りをぐるりと一周する。
ファンに手を振り、時には握手をして、二人が右周りと左周りに別れて、てくてく歩く。
先にステージ戻った稲葉さんが、手を広げ満面の笑みで松本さんを迎える。
それに答えて松本さんも笑顔で手を広げ駆け寄り、二人はこれまでのお互いを称え合う。
その瞬間、音楽の世界できっと多くの苦汁を飲んできたであろう松本さんが、溢れ出そうになるものを堪え、顔を歪める。またまた、グググっときてしまう。

 「これまで皆さんがくれた声援に心から感謝します」

確かそんなことを言っていた。これまで数多のアーティストが乱用したこのセリフ。
けれど彼らは心からバカみたいに本気でそう思っているのが、このDVDを最初から最後まで見ればわかる。
今日、ここにこうしていられるのは、目の前にいるファンのおかげなんだと。
だからこそ、惜しみない過剰なまでのファンサービスが隅から隅まで溢れている。
彼らの歌、言葉、表情から、伝えきれない感謝の気持ちが。

良い音楽が生まれるのもこの自然のおかげなんだっつて、地球ありがとうっつて、暢気な桜井さんちの和寿くんに、トホホとさせらてるファンとしては、
やっぱり、やっぱり、何度も、毎回、事あるごとに、羨ましい。
本当に、幸せだろうなと思う、B'zのファンは。

ちょうどボイトレでNYに滞在していた妹は、このLIVEには行けなかった。
負け惜しみに聞こえるだろうけど、と彼女はしみじみ言った。
「このDVD見て、あまりに楽しそうで、ちょっと行かなくてよかったかもって思ったよ。こんな楽しい時間が終わっちゃったら、空っぽになって、普通の生活で何もできなくなってたよ」

間違いなく、幸せだ、ファンも、あの二人も。