「くだらねぇ、くだらねぇよ」
風太郎は大金を手に入れた。
けれど金持ちになって本当にやりたかったことは、何ひとつできないことだったのだと、母の墓前で立ち尽くす。
「だもんで、金の使い方がよくわからないんだ」
とりあえず彼はその金で、刑事、使用人、父親、ともかく今目の前にいるハエどもの弱みを金で買った。
そしてかつての母にそっくりな路上生活者の女を見つけると、彼女に札束を無理やり渡した。
彼はとうとう大切な想い出も金で買った。
僅かに残った後悔も、償いも、後ろめたさも、不安も、何もかもを金で片付けた。
そうやって、自分を納得させていった。
金さえあれば、と。
ミムラのお嬢様が風太郎を罵倒するシーンは見ごたえ十分、この世の両極にある醜いものが交じり合いぶつかり合う。
「あなたを見ててつくづく思ったわ、貧しいってやだなぁ、お金持ちの家に生まれてよかたなぁって」
路上生活者の女は、金の奪い合いで仲間たちに襲われて死んだ。
ラストシーン、風太郎は叫ぶ。
「どうして?なんでだよ?金が一番じゃないのかよ!金で幸せになれないのかよ!」