毎朝通る雑貨屋にそれはそれはかわいらしいカバのぬいぐるみが飾ってあった。
頭だけでかくて、手足が細い。右手になんか意味不明なものを持っていた、黒いカバ。
1週間、見るたびに、ほしいほしいほしい、と。
よし、もし、今日の帰り、まだあのコいたら買っていこう。
あった。
その前にいくらだろうと、手を伸ばす。
主婦が片手間にやってるちっさい店。
決してセンスのよくない、ごちゃごちゃのディスプレイ。
奥にキラリとひかるカバ。
それに手を伸ばす。
周りにあった、ファンシーな花がついたフォトスタンドやら、へんなキーホールダーみたいなのが、ダダダダダー、バラバラバラー、と落ちた。
主婦の店員にキレ気味で「ディスプレイされてるものは声をかけてください」と言われた。
私は立ちすくんで、カバの後姿をみつめて、黙って店を出た。
「お金がないのにそんなの買っちゃだめだよ」
「そんなかわいいカバは君なんかに似合わないよ」
それとも
「もっと素敵なものがこの先にあるよ」
なわけないか。
小さい頃から、何かを強請ったりしない子供だったそうだ。
あれ欲しいとか、これ買ってとか、駄々をこねない子供だったそうだ。
思い返すと、幼い私はいつも賢明だ。
年齢を重ねる毎に愚かになっている気がする。
身にそぐわないことをしてすいませんもうしません。