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everywhere I'll go

YES ノッチ CAN !

きっとだろうなと思っていても、やっぱり、壇上に黒人一家が登場すると、
すげーほんとに大統領になっちゃったよと素直に感動してしまった。

ジェロという黒人が演歌を歌っているのを見たときも思ったけれど、
あの黒人奴隷とか、人種差別とか、一体なんだったんだろうと脱力にも似た感じがする。
一応平和な今に比べると、本当に空しく醜く愚かな時代だったのだなぁと思った。
それが日本ではなく、当のアメリカでこういうことになると、いくら泣いても泣ききれない思いになった人たちも大勢いるのだろう。

そういう感動を引きずったまま、「悪魔の契約にサイン」を見た。
お目当ては、ノッチ大統領だ。

まぁー笑った。手を叩いて泣いた。
こんなにテレビで大笑い大泣きしたのは、少し前のガキ使の「山崎歌劇団」以来。
永久保存版だ。今年はこの2つで終わり。

ノッチが「オバマ公認のオバマになりたい」と、アポなしでオバマに会いに行く。
最初はどこへ行っても、厳しい警官やらスタッフに足蹴にされる。
心折れるノッチ。
それでもオバマ支持者の多いシカゴに着くと、黒人たちがオバマに扮装するノッチを大歓迎。オバマ行き着けの床屋でも、写真を本人に見せ、きみが来たことを本人に伝えておくよとこれまた友好的。
思うに「扮装」とは言ったが、彼はただ赤いネクタイをしてスーツを着ているだけだ。日サロか地黒か、顔を黒く塗ることもしていない。そこがただの悪ふざけに映らなかったのだと思う。あとあのちっささが可笑しいとなるのかも。
少し元気になるノッチ。
そして彼がオバマとして街中のあらゆるところに現れるものだから、いつしか噂が噂を呼び、地元メディアにインタビューを受けるまでになる。
俄然やる気のノッチ。
「アイミートオバマ、アイミートオバマ」と連呼し食い下がるノッチに事務所のビルセキュリティは根負け。事務所に行けば女性スタッフ大うけ。本人は不在だったがオバマ上院議員の名刺をおみやにもらう。
止まらないノッチミラクル。
地元メディアから得た裏ネタで、オバマが現れるという場所へ行くが、やはりここでも、車の中にいるオバマの後頭部をちらりと見るに止まる。それどころか、銃やらショットガンを向けられそうになるという始末。
どうするノッチ。
そして、大団円が近づく。
集会が行われるという場所へ向かう。何十万人と集まった広場。
なのにノッチはオバマまで数十メートルというベストポジションを得る。
ノッチなめのオバマオバマから引くとノッチ。ありえない夢の競演。
演説が終わるとオバマが民衆と触れ合う通り道へ。
なぜかノッチ最前列。(今日のラジカルより。どうやら周囲の支持者たちがノッチを見て前へ行けと譲ってくれたそうだ)
オバマまで数メートル。オバマ大接近。オバマ近距離。
そしてオバマの腕を掴む。そして無理やり握手。
と、ここまでならありがち。だが、ノッチは思わず声を上げる。
「マイネイムオバマ、マイネーム、オバマ!」
オバマ、ノッチを二度見。苦笑気味だが満面の笑みで大喜びのオバマ
そして人差し指を上げて一言。
「ユーアーオバマ!」

泣けた。
大きな国の大きな歴史的瞬間の陰で勝手に繰り広げられた、
小さな国の小さな芸人の人生が大きく変わった瞬間。
総移動距離実に数万キロ。もうこれは、たまたま顔が似ていて、思いもよらぬブーム再来が訪れた芸人の、命を掛けたドキュメントだった。
これを1時間のバラエティ番組中の1コーナー30分足らずで収めてしまうのはもったいないくらいだ。このまま1時間の、今流行りのドキュメント番組でやってもいいくらい。

何も、体が不自由な人たちの復活劇だけが泣ける感動ドキュメントじゃない。
特に私のようなひねくれものにしたら「あたしだってね、こういう境遇に生まれたらそりゃぁ一生懸命生きるっつーの」と言われておしまい。
とことん笑いを追及しようとすると、その姿は人を感動させてしまう。
とことん人を笑かせようとすればするほど、その姿に人は泣けてしまう。
けれど最終的にあー面白かったと清清しくなる。

痩せたノッチが右手をいっぱいに上げ手を振ると、ボタンをひとつかけた大きめのスーツがいびつにつり上がる。
あのポーズが、もっともオバマな瞬間です。