優秀な人材と勘違いされ
あの日の僕はただ
過酷なしがらみを 掻き分けては
頭を下げていた
バカでもチョンでも出来る仕事だ。1400円はおいしすぎる。
脳みそ、どんどん、伸びちゃえばいいのさ。
そんな矢先。
「あなたはとても仕事ができるようなので、来月半ばから、こっちの仕事になります」
こっちの仕事って、あの仕事か。
くそ難しい、くそめんどくさそうな、あの仕事のことか。
でもって時給が同じって、ほんとぼったくりみたいなあの仕事か。
あのな、あたしの今やってる仕事がどんだけあんぽんたん仕事だと思ってんの?
あの仕事だからちゃっちゃ出来たわけ。
え?一緒に仕事してる人と比べると、っつったか?
だからあいつらは特別できないの。
あたしが仕事できるんじゃなくて、仕事が簡単すぎるんじゃぼけ。
いつもそうだ。
あーなんて楽な仕事なんだろうと、ちゃっちゃちゃっちゃいい気分で片づけてると
「リーダーやってくれない?」とか「教えてあげてくれない?」とか「この仕事もやってくれない?」とか
で、結局、嫌になって、めんどくさくなって、無職になっちゃうんじゃないか。
できねーからな。
あたし、難しい仕事、できねーから。
あたま、わりぃっていってんじゃん。
派遣の営業担当にメールしようか。
「これから、また新しい別の仕事を、1から覚えて、それをうまくやっていく自信がありません。今の仕事がたまたま私の能力に合っていただけです。現状のままの業務で仕事をさせていただけないでしょうか。」
一緒に仕事をしている25歳の女の子は、とてもかわいいのにずっと自分を卑下し続けながら生きてきたのだそうだ。
ところが最近お見合いの話がきて、タイプじゃないのだけど、でももう働くのも嫌だし、どうしようかと悩んでいたので、やっぱり女は若いうちのほうがいい買い手がつくから早いに越したことはないよと、私は正直に言った。
今日、彼女が、今週の日曜日に会うことになっちゃいましたと言ってきた。
ふと、そういえば、少し前、私にもそんな話をおやじが持ってきていたことを思い出した。
なら、一緒に寿退社しましょうよ、だったら私がんばります、と、その子は言っていた。
何もかも、もう、めんどくさくなってきた。
おやじにあの話、まだ生きているか、きいてみよう。
たしか銀行マンだとか。
なんだよおやじ。
あんた昔よく「銀行マンなんてろくなやつがいない、バカばっかりだ」っつってたじゃん。
みんなも、もう、めんどくさくなっちゃったんだね。