fake_BOOTLEG

everywhere I'll go

みずいろのケーキ

流れ行く時代に しがみつく僕を
笑い飛ばしてよ

Prism

また電車が予定通りに走らなかった。
こっちは予定通りになんとか起きて、予定通りに満員電車を我慢したのに。

会社で女が室温は34度で湿度は60%だと大騒ぎしていた。
どうして昼はみんなで一緒に食べなければならないんだ。
嫌々食べに行けば、17コも下の女に好きな音楽はときかれ、ミスチルと答えたら、
そのガキは散々っぱら桜井さんの悪口を吐き出しながらそばを食っていた。

残業させられ、やっと帰れると思った瞬間、
明日も会社かと思って、すぐまた憂鬱になった。

まるで拷問を受けに行く囚人みたいにダラリダラリ歩いて帰り道、
薄い色の空を見上げて、今朝の夢を思い出して、泣く。

電話をするときみの声がした。
私はおどおどした声で何か質問をした。
きみはとげとげした声で、まず電話で話すことを拒否した。
きみはちょっと待てと言って、それから女の人の声に変わって、またかけ直してくださいと言われた。
とにかく私は怖がっていた。
少しすると、きみがやって来た。
ニコニコして、右手に大きな箱を持っていた。
電話のことを謝りながら、それを私に差し出た。
開けると、大きくて、薄い色のケーキが入っていた。
ナイフを入れたらグズグズグズグズっと崩れ壊れた。
私が驚くと、きみはお腹を抱えて笑っていた。
私も笑った。
私が何かを言うたび、きみは手を叩いて笑っていた。

声も、笑顔も、シャツの柄さえ、すべてがあまりに鮮明で幸せだったから、
今、目の前にある全ての風景が夢であればいいのにと。
朝、目覚めて消えてしまうのが、あっちではなく、こっちならいいのにと。