私「桜の花咲く、校門をくぐった」
男子「あの日」
みんな「あの日!!」
小学校の卒業式で、やりましたよ、呼びかけ。
なんかこの自分のセリフが好きでね。今でも鮮明に覚えています。
ちょうど校長先生もその日が「卒業」で、壇上で感極まってらっしゃいました。
事前に好きな言葉を児童ひとりひとりに聞いて、校長先生が毛筆で色紙に書いて用意してくれて、
卒業証書と一緒に手渡された時は嬉しかったなぁ。
「出会いから物語へ」という言葉を書いてもらいました。
なんか悲しくてね、あたしはおいおいおいおい泣いていたのを覚えています。
今思えばね、みんなと一緒にすぐ向かいにある中学校に進学するというのにね、
なにがあんなに悲しかったんでしょうかね。
それにね、大した好い思い出なんてなかったんですよ。
自分の体の欠点をいろんな人にからかわれて、あーこれって、他人と違うことって、
きもち悪いことなんだと絶望を知ったのも小学校でしたしね。
いじめは順番でひとりひとりに回ってきましたし、好きな人には好きとも言えなかったですしね。
なのになんで泣いたんでしょうね。
でも卒業式ってそういうもんなんです。
嫌なことが薄れて、とにかく笑ったことしか思い出せなくなるのね、あの瞬間。
「21世紀は私たちのもの。私たちの未来は輝いている。期待されている。希望に満ちている」
というセリフもあったなぁ。
泣いたのは、怖かったんでしょうかね、漠然と。
楽しかったって、まだここにいたいって、やっと思えたのに、
未来へ向かって、無理やりポンと背中を押されてる気がして。
ちょっと待ってよ、あたしのタイミングで行かせてよ、と。
小6の男の子が卒業式に「大嫌いな学校」と言って飛び降り自殺をした。
文集用のアンケートにその子は「将来の自分」に「死んでいる(地獄)」と書いていた。
その下の行の「好きな有名人」に「桜井和寿(Mr.Children)」とも。
私はこの人の歌を聴いて、死ぬのを辞めた。
まだこの先もこの人の歌を聴きたかったからだ。
小学生の時からこの人の歌を聴けるなんて、最近のコは羨ましいと思っていた。
時代を重ねれば重ねるほど、苦しみの基準は上がっているのでしょうか。
だとしたら、今の子供たちはあたしなんかより100まんばい強い大人になる気がする。
もちろん、子供の頃に味わった苦痛や空しさなんか、お話にならない毎日が待っているけど。
その代わり、幼かった頃の自分を愛しいと思える。
誰にも好かれていないと思っていた自分を、何十年後かの自分が好きだと言ってくれる。
会いたいと言ってくれる。
言ってくれるのに。