fake_BOOTLEG

everywhere I'll go

幸福の保管場所

そうだ野球も好きって言ってた。
中学の時はセカンドとかサード守って、1番バッターだったって。
それを今日近所のグラウンドでキャッチボールする男の子を見て思い出した。

月曜になれば必ずきみに会える。
それが簡単に約束されていたあの日。
こうやって同じグラウンドの前を通って、野球をする子供たちを眺め、
きみもこんな感じだったのかなぁと、幸せな気分になったんだ。
とても天気が良くて。

あの日、きっと、この風景に私は幸せの記憶を焼き付けた。
そして今の私が、その風景を見て、思い出した。

きっと私はこうやって、そこかしこに焼き付けてきたのだろう。
自分の中に置いとけないから、花や空や音楽や物質、可愛いものや美しいものの中に。

未熟で飽き性で僻み屋で怠け者で嘘つきな自分を信用できずに、
素直でまっすぐで一途で前向きで元気で懸命な自分を預けたのだろう。
一瞬でもそうあれた自分を大切にしまい、
悲しみや憎しみや後悔や妬みややっかみや失望だけを体に染み付けて。

あの頃の私が預けた記憶はきっとまだどこかにたくさんある。
そして何かの拍子にきっと思い出す。
それを探し出してみつけるために、ただ生きていく。

あの頃のきみに会えた気がして、きみの声が聞こえてきて、きみの笑顔が浮かんできて、
微かでも幸せを感じられるから。