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everywhere I'll go

「扉をたたく人」を観た

ロードショーしていた時期、観たいなと、思うと同時に、
あぁ・・・舞台がニューヨークか・・・嫌いなんだよね、NY。エヌワイ。なんだよ、エルエーに続き、なに略してんだよ、あぁ、いけ好かない。なんかいけ好かないんだよ、ニューヨーク。
ということで、観なくてもいいかリストへ入れてしまった、自分はなんとも愚か。

今日、BSで見てみた。

あぁ、好い映画だった。
そして、やっぱりアメリカってよくわからんけど、やっぱりいけ好かねぇ度さらに倍。

911以降のアメリカにおける移民問題
難しそうだ。
というか、きっと、そのことに関してここであーだこーだ、この能天気なイエローモンキーが語る資格は露ほどもない。

だからそれはさて置く。
置いたって、この映画は好い。

主人公がじいさんなの。
頭ザビエルった、しがない、もう背景になってしまうような大学教授。
このじいさんが、できもしないピアノを習っている。
もうそれだけで、もの哀しい。
そして物語中盤で、死んだ妻がピアニストだという説明が、それはそれはさりげなーく挿入される。
あぁ、もう哀しい。哀しすぎるでしょ、じいさん。

そのアメリカ人じいさんが、息を吹き返す。
シリア人青年のたたく太鼓の音で。
青年と、青年のセネガル人の恋人、そして青年の母親との出会いで、
彼は、疾うの昔にやめてしまった、笑顔や、温もりや、甘酸っぱさや、怒りや、傷みや、歯がゆさを、涙を、取り戻していく。

ハッピーエンドで、どうか、このじいさんに、ハッピーエンドを、と願ってしまった。

そうではないよね。

そうでした、これは、アメリカってヘン、アメリカってそら恐ろしい、と持っていかないと。
映画観た人に、この「アメリカの仕組素人」にでも、にっくきアメリカめ!バーカ、アメリカバーカ!という残骸だけでも持って帰ってもらわないといけなかった。

ラストシーンの主人公が哀しい。
ピアノをトボトボ習う老人のそれより、深く、力強くなった哀しさを身に纏ったじいさんは、凛々しくて、「クール」だった。

見て損なし。