長野の友に、忙しい合間をぬって、電話にでてもらった。
これまでの男の所業を詳細に説明している途中に彼女は言った。
「この話、まだ続くんだよね」
「えぇ、まだまだネタはありますが」
「聞いてらんないんだけど、きもちわるくて」
「あ」
「その男もあんたもきもちわるいって」
要は、あたしらは、DVカップルそのものだそうだ。
男が言葉の暴力で女をちくちく傷つける。
女が傷ついたという。
男はごめんもう二度としない、僕には君が必要なんだとすがる。
女は自分を必要としてくれるという理由で男と別れない。
「まさに、テレビでよくみるDVのサイクルじゃん」
正直目からうろこ。
言われてみればそうであります、先生。
そうよ見た見た、ドラマで見たよ、こんなの。
そのどうしようもないアホの女を、今まさに、わたくしめがその役を担っているではありませんか。
「ドラマじゃないんだからこれ、ノンフィクションだから、気分わるいっつの」
はぁ、たまさか、わたくしが、そのヒロイン役をやってのけてるとは思いませんでした。
「あんたのその我慢強さをさ、そんな男に使うなよ、別で使ってよ」
ですよね、おさぼってる場合じゃないわねお仕事。
なんちゅうかな、ごめん、気づかなかったわ。
ほれ、あたし、元々、ウツってるからさ。
あ、多分よ、病院とか行ってないけどもね、多分、病を抱えていると思うのね。
そこに、DVの穴にハマって、別の病が悪化してたとしても、元の病の症状とおっかぶさって、わっかんなくなっちゃうのね。
言っている意味わかる?
えーっと、元々下痢気味の人がさ、食中毒になって多少下痢がひどくても、気づかないじゃんか、ね、そんなもんでしょ?
まいった。
まだ私が落ちていない落とし穴があるとは。
「ちゃんと前を向いて歩いてください」
はい、すみませんでした。
とりあえず「DV 別れ方」でググります。