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everywhere I'll go

最期の番宣

今朝、めざましテレビを見ていたら、もう泣けて泣けて、全然、化粧がままならなかった。

風のガーデン」の出演者たちが緒形拳を忍んでいた。
ドラマの視聴率がよかったらみんなでヨーロッパに連れて行ってもらおうとおどける姿。
「死というものは否応なくやってくる」という台詞のシーン。
全てがただ辛い。
自分の死を間近に感じながら、彼は、死について、未来について、語っていた。
終わりがわかれば、誰もがこんなにも自分に残酷に、けれど強い人となれるのだろうか。

もしかしたら、フジテレビの誰か、スポンサーの誰か、
緒形拳さんが亡くなったと聞いて、これでドラマが話題になる、と思ったかもしれない。
それは仕方ないことだし、当然のことだろう。
私も、だから、今日、観ることにしたひとりだ。

これは勝手な想像だけれど、彼はこのドラマが最後の仕事となることを覚悟した時、ならばやり通してから死のうと決めた時、自分が死んで少なからずこのドラマが話題になるであろうことは予想していたのだと思う。
どうゆう理由であれ、このドラマを観てくれる人が増えれば、自分の役者としての責務をまっとうしたということになる。
最期のその瞬間までも、彼は役者であれたのだ。
生きてる人間が死んでしまった人間に「いい人生だったよ」なんて言ってるのを聞くと、勝手に決めるなよ、といつも嫌悪に感じていたが。
私から見る限り、緒形拳の人生は素敵だ。過ぎるくらい、すばらしく、かっこよく、だから終わってもなお美しく、より悲しい。

中井貴一さんが最後に緒形さんと会ったその日の別れ際、
彼は笑顔で「じゃあな、また会えたらな」と言ったのだという。

幼い頃、「鬼畜」を見て、なんて醜く残酷で惨めで汚いおじさんなんだと、
しばらくその印象が抜けず、恐くて仕方なかった。
その役者はいつの間にか、とても穏やかで柔らかな可愛らしい老人となり、
優しい風みたいにいなくなった。